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パリ留学中、日々のあれこれ

3.11とあの頃の呪縛

 

3月もあっという間に、中盤に差し掛かって、春もぐんぐん近づいてきました。

昨日は3・11。あれから12年。

 

みなさんは、あの揺れの瞬間、どこにいて何をされていただろうか?

私はあの日、都内の予備校にいて、階段で予備校のスタッフと立ち話をしていた。

一浪して、第一志望に受からなかったところで、そのスタッフに二浪して再チャレンジしてみたら?と説得されていた、まさにそのときに大きな揺れがやってた。彼と急いで階段を駆け下り、予備校のラウンジに避難すると、さらなる揺れがやってきて、それはまさに死を覚悟するほどの強さだった。関東大震災は再来する、とずいぶん言われていたけれど、それはこの地震のことで、今ここで死ぬかもしれない、と確かに思った。

 

あれから12年、予備校で出会った人たちとは誰一人連絡をとっていないけれど、あの日、あの瞬間、階段で話していたスタッフは、私のことを覚えているだろうか、と思う。特定の瞬間の記憶を、これほど多くの人と共有することって、なかなかないが、それほど東日本大震災というのは、多くの人の人生を揺るがす出来事だった。


ここ数日、2011年1~3月放送のフジテレビドラマ、「たいせつなことはすべて君がおしえてくれた」を見ていた。同じ職場に婚約者(戸田恵梨香)がいながら、女子生徒(武井咲)と関係を持ってしまう高校教師(三浦春馬)の話。震災当日もこのドラマの撮影日だったとtwitter でたまたま目にしたが、私より一歳しか歳が変わらない三浦春馬が、弱冠20歳で高校教師役をこなし(このドラマでも彼の演技は素晴らしい)立派な社会人として社会に尊いものを生み出していたのかと考えると、尊敬と畏怖の念でいっぱいになる。

 

前置きが長くなったけれど、3.11のあの日、あの時、19歳の浪人生の自分を思い出すたびに、胸が苦しくなる。それは、当時自分をがんじがらめに縛っていた、受験勉強ができないと、人並みの能力がないという、呪縛だ。あの頃の私は、数学が本当に苦手で、どんなに頑張っても偏差値50が取れなくて、自分の努力が肯定できなくて、自分のことが嫌で嫌で、惨めでたまらなかった。

 

あれから12年が過ぎて、30歳になって、人間には向き不向きがあり、受験勉強は、世界のすべてではなく、世の中で測られる能力には様々なものがあって、世界によって物差しの長さも違うことを知った。数学はとっても苦手で、第一志望には受からなかったけれど、世界の彩りと豊かさを知るのには、出身大学は関係ないことも学んだ。

受験勉強には不向きだったけど、私は語学が好きで継続力もあるため、フランス語をそこそこ話せるようになって、パリで生活するという夢が叶った。年をとることにはそこはかとない、哀しさがいつもあるけれど、年を取って自分を知るほど、10代の苦しみがだんだん遠のいていくことに安心感を覚える。

 

私が、敬愛するミュージカルで、Kinky Boots という作品がある。

自己と他者の受容がテーマの愛に溢れた作品だけれど、最後の大団円のシーンで 歌う曲に”Just be, who you wanna be (なりたい自分になりなさい)”という歌詞がある。

自分をよく知り、なりたい自分になること。

それが、人生で一番大切なことなんじゃないかと思う。

 

 

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